第23章 合宿
全員が揃ったようでみんな各々ご飯に箸をつけ始めた。
今日は私も大人しく箸を左手で持ってご飯を食べ始めた。
いつもは聞こえてくるはずのみさきなでしこの声が聞こえてこないのもあるが何故か目の前のご飯が無性に食べたくなったのだ。
自分の体がちょっとおかしいと気づいているが、元々おかしいしあまり気にしない。
「お、今日は交代してねぇんだな。」
虹村さんにそう言われたが返事をせずにぱくぱく口の中にご飯を入れる。
「無視かよ!...てか、なんかおかしくないか?こんな自分から進んで飯食うなんてよ。」
「.....。」
箸が止まらず一気に平らげてしまった。
「...おかしいのは元からだから。」
「おい...。」
素っ気なく返事をして、空になったお椀を持っておかわりをしにいく。
自分でもあり得ない光景だなと思いつつも足が止まらない。
白米をよそい終わって席に着いて、また食べる。
「柏木、もっとゆっくり噛んで食べろ。」
「....。うるさい...!」
つい口からそんな言葉が出た。
頭がカァと熱くなって更にご飯を口に放り込む速さが増した。
「おい...ちょっとほんとお前おかしくねぇ?」
虹村さんに左手を掴まれて抵抗する。
「離して...!」
「ちょっと落ち着けって...!」
「おかしいのは元からって言ってるでしょ!」
勢いで虹村さんの手から自分の手を振りほどいた。
私の声が大きかったのか食堂がシーンと静まり返って、コーチが何事だと聞いてきたが赤司くんが上手く取り繕ってくれたから怒られはしなかった。
「ほんとに...何でもないから、ほっといて。」
ご飯を食べ終わってからは俯いてじっとしていた。
頭が熱く、些細なことでイライラしていて自分の様子が普段と違うことは分かっていたがそれを止めることが出来ない自分を嫌悪しながらみんなの食事が終わるまでギュッと膝の上で握っているこぶしを見つめていた。