第23章 合宿
「あ、由良ちゃんおかえり。もう、すぐどっか行っちゃうんだから。」
「...ごめん。」
「いいよいいよ。それより早く着替えて体育館行こ!」
さつきにそう言われて自分がまだパジャマ代わりに着てたTシャツ姿だったのを思い出した。
それらを脱いで制服のスカート、半そでのTシャツ、まだ寒いから上着も羽織って靴下を履いた。
髪も結んで準備は終わった。
「由良ちゃんはポニーテールにしないの?」
「ポニー...テイル?」
「うん。絶対そっちの方が涼しいし可愛いと思う!」
「...自分でやったことない。」
「じゃあ私、やってあげる。絶対可愛いよ。」
私はさつきに促されてさつきの前に座った。
櫛を使って髪がまとめられている。
さつきは料理は壊滅的だけどそれ以外だったら手際がいい。
「出来た!ほら、やっぱり可愛いよ。」
鏡を手渡されてそれで自分を見てみる。
いつもと違う自分がそこにいるみたいでなんだか変な気分だ。
「頭、重い。」
「由良ちゃん髪の量多いもんね...。」
「でも...首涼しいからこれでいい。」
「ほんと?良かったぁ。やっぱり気に入らないとか言われたらどうしようかと思った。さ、終わったことだし早く行こっか。」
さつきが立ち上がって私に手を差し伸べてくれた。
その手を取ろうか迷ったがさつきが私の手を引っ張って立たせてくれた。
私はさつきに引っ張ってもらった手の掌を見つめた。
『由良ちゃん、行こうか。』
『由良ちゃん。』
『ようやくワシの手、握ってくれるようになったな。』
「由良ちゃん、行くよ?」
さつきの声で我に帰った。
ふすまのところでさつきが待っているのに気づき、慌ててそちらに行く。
「どうしたの?手なんか見つめちゃって。」
「...ううん、なんでもない。」
「そっか。」
さつきはそれ以上深く聞いてこなかった。
二人で体育館に急ぐ。