第23章 合宿
「...ごめんなさ...。」
「あらら、大丈夫~?」
間延びした声が聞こえてすぐにぶつかったのが紫原くんだと分かった。
赤司くんも隣にいて驚いた。
「...大丈夫。」
「柏木、そんなものを持ってどこへ行くんだ?」
そんなもの...って、あぁ。
自分の持ち物を見て言われていることを理解した。
「...食堂。」
「食堂は鍵が掛かっているはずだが。」
「...開けてもらった。...もう行っていい?」
二人の隣を通り抜けようとして手を掴まれた。
「まだ話は終わっていないよ。」
「...じゃあ一緒に来る?」
こんな中途半端なところで質問攻めにされるのも嫌で提案した。
本当に着いてくるとは思わなかったけど。
食堂に着き、ドアを開ける。
「由良ちんの言った通りほんとに開いてんね~」
電気はつけずそのまま水道のところに行く。
底がそこそこ深い鍋に水筒の中身を注いで火を点けた。
「それは?」
「...牛乳。」
「なんでそんなもんあっためてんの~?」
「...こうしないと落ち着かないから。」
「柏木は誰かに言われない限り何も口にしないと聞いたが?」
「...言われたから作ってるの。」
「誰に?」
「...さとりん。」
「は?」
赤司くんの頭に疑問符が見えるがそれを気にせず、そろそろ温まったであろう牛乳を持ってきたマグカップに注ぐ。
湯気の出たホットミルクを少し冷ましがてら使った鍋を洗って拭いて元の場所に戻してガスの元栓を閉めてそこの片づけを終えた。