第23章 合宿
私の頭を洗っていたせいでさつきは自分の頭や体を洗えていなかったらしい。
さつきは頭から洗っているが体から洗っている私にしてみればおかしな光景だった。
「ねえ由良ちゃん。由良ちゃんて、好きな人、いる?」
好きな人...。
「...赤司くん。」
「へぇ!ちょっと意外だなぁ。ね、どんなところが好きなの?」
「...いつもは隙がなくて完璧だけど、ふとした時に見せる柔らかい表情とか人一倍努力してるけどそれを誰にも見せずに一人で頑張れるところとか...かな。」
「由良ちゃんからそんな話が聞けるなんて...。由良ちゃんもやっぱり女の子なんだね。」
さつきの顔が赤い気がする。
もうのぼせたのかな...?
「さつき...もう上がりたい。」
「そっかぁ。私はもう少し浸かってたいから先上がってて。」
「うん、わかった。」
「今の話の続きはまたあとでしようね。」
さつきを置いて先に浴槽から出る。
そのまま脱衣所に行き、体を拭いてから持ってきたものに着替えた。
ちょっと大きめのロングTシャツを着てその下から七分丈のレギンスを履く。
夜と朝は寒いと聞いていたから上も下も生地は厚めの物を選んできた。
そして髪を拭いて乾かしてから脱衣所を出た。
廊下は少しばかり涼しかった。
脱衣所と廊下とでは温度差があるらしい。
さっさと部屋に戻る。
女子の部屋は男子の部屋とは離れていて孤立しているからかなり静かだった。
カバンから水筒とマグカップを取り出して部屋から出る。
そのまま食堂に向かった。
食堂には普段は鍵がかかっているが今回は開けてもらっていた。
食堂にある鍋と火を使うために許可をもらって特別に開けてもらった。
廊下の角を曲がったところで誰かにぶつかって少し後ろによろめいてしまった。