第23章 合宿
食事中はみさきなでしこと交代していたが、隣で食事をしている赤司くんと虹村さん以外にそのことに気づいた人はいなかった。
当たり前といえば当たり前だろう。
私が多重人格だと知っているのは部員の中でもキセキの世代の人たちと虹村さんぐらい、交代してもせいぜい変わるのは雰囲気と口調ぐらい。
監督やコーチも私の雰囲気の違いに気づいてはいるだろうが、知らないはずだ。
食事をし終わったようで直接頭の中にみさきなでしこの声が響いてきた。
私はすぐ前にあるトンネルをくぐって先にある光っている出口に向かってみさきなでしこと交代した。
目を開けると、すでにお皿の上は空になっていた。
「おい、大丈夫か?」
状況をなんとなく理解していたところに隣から声がかかった。
それが虹村さんの声だと分かるのに数十秒かかって、それから頷いた。
「...うん。」
昼間と同じように皿を片づけて部員たちが部屋に戻って空いたテーブルを布巾で拭いていく。
全部のテーブルを拭き終わったらさつきと一緒に洗い物をして、食堂の点検をしてから電気を消して二人で部屋に戻った。
「ようやくお風呂入れるね。」
「...早く入りたい。」
「ねー。」
お風呂の準備をして早速お風呂に向かう。
男子は人数が多いが、みんな男子風呂を使う。
女子は私たち二人しかいないが赤司くんの計らいで女子風呂をゆっくり使っていいということになっていた。
男子が女子風呂を使うという手もあったが、男子が浸かった湯船に浸かるのは嫌だろうという気遣いからそうなった。
だから私たち二人はゆっくりお風呂の時間を取れるのだった。