第23章 合宿
「全員揃いました。」
赤司くんが人数を数えてコーチに伝えると、コーチがバスに乗った時の注意とかそのあとの注意とか長い話をしてからみんなあらかじめ決めておいた席順で順番に乗っていく。
「私は由良ちゃんの隣だね。」
さつきが笑顔で私の腕に腕を絡めてくる。
「うん。」
私の席は監督の後ろ、左側の通路側2列目だ。
そして、通路を挟んだ席には赤司くんが座っている。
これを聞いた時嬉しかったのを覚えている。
「由良ちゃん、お菓子食べる?」
バスが出発して少し経った頃、隣のさつきがチョコを私に渡してきた。
食べたくはなかったが一応もらっておく。
「...ありがとう。」
「いいえ。」
さつきの笑顔は曇りがなくて本当に素敵だと思った。
ふぁぁ~
ねむ...。
「由良ちゃん眠い?」
「...うん。」
「着いたら起こしてあげるしそれまで寝てていいよ。」
その言葉を聞いてからうとうとし始めて大人しく目を瞑った。
目を閉じると、徐々に意識が遠のいていって目を閉じて数分で眠りに落ちてしまった。
目を開けると知らない景色が目の前に広がっていた。
周りを見回してみて分かったことはここがビルの屋上だということ、私がフェンスを飛び越えた先にいるということ、そして3歩進んでしまえば落ちてしまうということ。
どんな気持ちで私がここにいるのかは分からない。
今から私がしようとしていることは分かるけれど、やめようなんて微塵も思わなかった。
ここまで来た経緯を思い出してみようと試みた。
すると、ある言葉が頭の中に響く。
「許すことがまず初めの一歩だ。」
私は前へ進む。
1歩、2歩、3歩...そして、4歩目。
その4歩目は足が地面に着くことなく私の体は重力に従って下に落ちていった。