第21章 赤司主将
「...オメーは大事じゃねぇのか?」
「...私は...」
答えようとした時、声が聞こえてきた。
『*****が何言ってんの?何を迷う必要があるの?』
そうだね...。迷うことなんて、ないんだ。
頭の中から聞こえる誰かの声に耳を傾けた。
この時の自分は自分じゃないみたいな感じになるけど、自分ではどうすることもできないから諦めている。
その声に誘導されるように口を開いた。
「...そんなのどうでもいい...。」
そう言った時の私は自分でも怖いと感じた。
ベンチから立ち上がって二人に背を向けて言った。
「ただ絶対に許せない人がいるの...。」
ひどく冷たい声だったのに、頭はすごく熱かった。
右手も強く握ったせいで手のひらに少し痛みがあった。
頭の中がぐちゃぐちゃで怒りに満ちているけれど、反対に落ち着こうともしていた。
目を瞑ってゆっくり深呼吸して、落ち着けと頭の中で反芻する。
もうさっきのような誰かの声は聞こえない。
頭も段々冷めてきた。
もう...大丈夫....。
そう思って、虹村さんと赤司くんの方を向いた。
「もう...帰ろう。」
「お、おう...。」
「あぁ...。」
気まずい空気の中、公園をあとにした。
その空気を作ったのは私だけど...。
「夜、だと、変なこと口走っちゃうんだ...。だからね、...二人が気にする必要はないからね...。」
「わ、分かった。」
「....。」
なんのフォローにもならない言葉を二人にかけて、あとは家に着くまで沈黙した。
「...送ってくれて、ありがとう。また...ううん...バイバイ。」
また明日ね、という言葉を飲み込んで二人に手を振ってマンションの入り口に入った。
今日は虹村さんの家でご飯を食べたよ。虹村さんの家はあったかくて私の理想のような家だった。お母さんも優しくて今度たこさんウインナーの作り方を教えてほしいと言ったら快く頷いてくれて嬉しかった。
あと、虹村さんに炭酸をおごってもらったし、赤司くんに抱きしめてもらってすごく嬉しかった。
由良