第21章 赤司主将
「あ、柏木サン、大丈夫っスか?」
さつきに抱き着かれている時に偶然通りかかった黄瀬くんにそう聞かれた。
「...うん。さっきはありがとう。」
「さっき?」
「...体育館で運んでくれた。」
「あぁ...無事で何よりっス。」
笑顔が素敵だった。
私のいびつな笑顔よりも素敵な...。
私もいつかあんな風に笑える日が来るのかな。
練習が始まって、私は赤司くんに指示された通りにステージの上でしおり作りに専念していた。
ただし、体育館はムシムシしていて暑いので、1時間に一回ぐらいは外に出て空気を吸ったり水をこまめに取るという条件付きで。
みんなの練習風景を見ながらちょこちょこ休憩を挟みながらうまくやっていった。
「柏木。」
ふと名前を呼ばれてそっちを振り向く。
虹村さんだった。
「...なに?」
「敬語。」
いつもの調子で敬語を使わず話したら軽く怒られた。
「...なんですか?」
「しおり順調?」
「...はい。」
「そっか。...ちゃんと水飲めよ。」
「.....。」
「なんでそこで黙るんだよ。」
「...喉乾いてないからいい。」
「あのなぁ...そういう問題じゃねぇんだよ。」
首を傾げて虹村さんを見た。
「喉乾いてなくても飲むもんなの。分かる?」
「...なんで?」
「オメー、夏に弱いらしいじゃん。ぶっ倒れんぞ。」
「....。」
これ以上何を言っても無駄だと思い、そばに置いてあるペットボトルの蓋を開けて飲んでるところを見せた。