第21章 赤司主将
夢を見た。
ここに来る前の家で起こったこと。
私が多重人格になったきっかけとなる出来事。
「お母さん....。起きて、お母さん....!」
小さい私がそう必死に言っていた。
ソファーに横になって寝ている女の人を揺すっていた。
リビングと思われる部屋はカーテンで日光が遮られて薄暗く静かで、その部屋に響くのは私の声と時計の針の音だけでなんだか不気味な空間だった。
小さい私は女の人を揺するのを止めた。
いや、女の人がもう起きることはないと悟って諦めた。
小さい私は全身の力が抜けたように膝からガクンと崩れ落ちて奥歯を噛み締めていた。
そんな私の左目から涙が一筋流れた。
そこで目が覚めた。
白い天井が見えた。
薬品の独特のにおいがして保健室で寝ていたことを思い出した。
なんで...あんな夢....。もう嫌だよ...。
体を起こしてベッドの上で膝を抱えてそこに顔を埋める。
「柏木さん、起きた?」
先生の声が聞こえて顔を上げた。
「...起きた...。」
「疲れてるみたいだけど大丈夫?」
大丈夫か聞かれて答えに迷ったが、結局は大丈夫だと強がった。
本当は心が折れそうなほど精神的に疲れていた。
「大丈夫そうには見えないけれど...。赤司くんと担任の先生がいらっしゃってるけどお話できそう?」
「...うん。」
「そう。じゃあ呼んでくるわね。」
保健室のドアが開く音がして複数の足音が聞こえてきた。
それが赤司くんたちだろう。