第20章 虹村主将
練習はその後、夕方ぐらいまで続いてそのあとは自主練の時間だった。
赤司くんと虹村さんは当然居残り、他の1軍メンバーの多くも残っていて空が暗くなるまで体育館からはボールの音が聞こえた。
私もなんとなく夜まで居残ってみんなの練習の様子を見ていた。
蓮花side
私は暗い校舎の中を歩いていた。
どうしてかは分からないけど歩いていた。
そうしてたどり着いたのは職員室。
そこから話し声が聞こえて思わず立ち聞きしてしまう形になってしまった。
周りが静かだから中の話し声はよく聞こえた。
聞き覚えのある声で、この声は虹村さんと...うーん...誰だろう。
どうでもいいことを考えていると、虹村さんの声が聞こえて聞き覚えのある会話が聞こえてきた。
虹村さんのお父さんが春から病気で入院していて全中の頃にはどうなっているか分からない。自分の性格だと試合中でもお父さんの具合が悪くなれば病院に行ってしまう。だから主将の座を降りたい。
そんな内容だった。
嗚呼...とうとうこの日が...。
と思っていたら暗いけど赤い髪が綺麗な赤司くんが職員室前いつの間にかにいた。
赤司くんはいつからこの会話を聞いていたのだろう。
赤司くんの気持ちを考えると、なんだか心が重たくなった。
職員室では会話が終わったようで、ドアを開けて虹村さんが出てきた。
「お前ら二人なにやってんだ。こんなとこで。てか、話聞いてやがったな。」
虹村さんが私たち二人を睨んだ。
「最後の方だけですが...。」
「一番聞かれたくないとこじゃねぇか。柏木は?」
「ふふっ...どうでしょう。」
私は笑ってごまかした。
「聞いてたんなら話は分かるな?よろしく頼むぜ、赤司主将。」
「...はい。」
これが虹村さんが赤司くんに主将の座を譲った瞬間だった。