第20章 虹村主将
虹村さんは弁当を粗方食べ終わって、質問タイムに入った。
「マネージャーの仕事慣れたか?」
「...多分。」
慣れたか慣れてないかと言われれば微妙なところだ。
一人で黙々とやる仕事は出来るがどうもコミュニケーションをとることが苦手でそれは出来ない。
「なんか悩みとかは?」
「ない。」
「即答かよ。...まあ、悩みがないのはいいことだ。」
正確には虹村さんに話すような悩みはない、だ。
たとえ虹村さんに話したところで解決できない悩みならある。
「...そういやオメーの親って病気のこと知ってんの?」
「...知ってる。」
「話して理解してもらうの大変だったんじゃないか?」
「...そうでもない。」
「そっか。よかったな。」
虹村さんの顔が優しそうな顔になった。
この顔の虹村さんは好き...。
「オメーが多重人格だって聞かされてちょっと家で調べたんだけどさ、ストレスが原因らしいじゃん。なんか思い当たることあんの?」
ストレス....。
虹村さんから視線を外して空の方を向く。
過去の色々なことが頭のなかを駆け巡った。
そうして数分間ぼーっとしていたら声が掛けられて肩に手が乗せられて思わず肩がビクッと上がってしまった。
「どうした?なんか嫌なこと思い出させたか?」
「...別に...。」
虹村さんが心配そうな顔をしてこっちを見ていたけど、返事がそっけなくなった。
「ただ...たまに生きてる意味が分からなくなるの。...自分の気持ちが分からないの。なんでかなぁ?」
虹村さんに聞いても分かるわけがないのに尋ねてしまう。
「なんでって...言われてもなぁ。人間たまにはそんなこともあるんじゃね?死にたくなることだってあるだろ。」
変なことを聞いたのに虹村さんは頭を掻いて困りながらもちゃんと答えてくれた。
やっぱり虹村さんて...根はやさしい人なんだよね...。
この人なら私のこと....。
期待してしまいそうになるのを堪える。