第20章 虹村主将
「マジか...。...仕方ねぇから俺のちょっとだけ分けてやる。」
自分の弁当を私の方に差し出してどれがいいか聞いてきた。
「いらない。...食べたくない。」
「そんなこと言ってねぇで選べって。食わねぇと午後倒れっぞ。」
「...一食ぐらい抜いたって変わんないから平気。」
「主将命令だ。なんか一個でいいから食え。」
私がこれ以上拒否したところでこの人は私に食べ物を食べさせるんだろうなと諦めて虹村さんの弁当の中から一つ選ぶことにした。
私はタコさんウインナーを選んだ。
「...これ、誰が作ったの?」
虹村さんの弁当を指さして聞いた。
「おふくろが作ってくれた。」
「...ふーん。」
「オメーは親に作ってもらってねぇのか?」
「....お母さんはそんなことしない。」
「そうか。」
「...タコさんウインナー、作るの難しい?」
つまようじに刺さったタコさんを眺めながら聞いた。
「うーん。慣れれば簡単なんじゃね?」
「...ふーん。」
慣れれば、か...。
前々から気になっていたタコさんウインナーを初めて口にすることができて内心感動していたが、表情筋は働いてくれなかった。
正直味は分からなかったし食感も普通だったけどタコさんウインナーを食べられたことがすごく嬉しかった。
「気に入ったか?ウインナー。あと2つあるけど食べる?」
虹村さんに言われて弁当の中を見るとタコさんウインナーがまだあることに気が付いた。
食べるか聞かれたから迷わず頷いて2つのタコさんをもらった。
その2つもある程度眺めてからパクッと口の中に放り込んだ。
今度自分でもタコさんだけ作ってみようと思った。