第20章 虹村主将
休憩の時間になり、みんなにドリンクを配っていく。
左手が使えないから右でドリンクのボトルを袋に入れて運ぶ。
体育館の端で死んでいる黒子くん、どこからか持ってきたお菓子を食べる紫原くん、バインダーを手に何かについて考えている涼しげな顔した赤司くんとその横で暑苦しい虹村さんに順にドリンクを渡していく。
「おい柏木。」
今日何度も聞いているはずの声なのに名前を呼ばれただけで体がびくついた。
ある程度の距離を保って振り返る。
「このあと昼飯食べながら面談するぞ。」
「え。」
「オメーに拒否権ねぇから。昼飯持って体育館の裏集合な。」
それだけ言って行ってしまった。
虹村さんが何を考えているのか分からなくてその場に呆然と立ち尽くした。
虹村さんに言われた通り、体育館の裏に来た。
まだその本人は来ておらず、私は段差のところに座った。
これから虹村さんと面談、か...。
面談にはいい思い出ないなぁ。
過去に会った学校での面談を思い出して一人で苦笑する。
「お、早いな。待ったか?」
虹村さんが来て慌てて表情を固くした。
虹村さんは私と人一人分座れるか座れないかぐらいの距離で座った。
「...ううん。」
「そんじゃ早速始めるか。」
「....。」
「そんな固くなんなよ。そんな大したこと聞かねぇよ。」
ヘラヘラ笑いながら弁当を広げ始めた。
「そういや、弁当は?」
「...持ってきてない。」
「持ってこいって言っただろ?」
そういう意味じゃなくて....。
「...学校に持ってきてない。」
「遅刻して慌ててたから持ってこなかったとか?」
違うけど...。
「...うん。」
面倒だから適当に返事をした。