第20章 虹村主将
由良side
また...覚えてない...。
この左手...私...前にも同じことやった...。
覚えてるのは虹村さんが怒っている顔だけ。
私はなんだか虹村さんを怒らせてばかりな気がする。
朝起きたベッドの上でそう思った。
それにこの部屋...私の部屋じゃない...。
部屋の物からからして、子ども...ということは万華鏡。
ベッドから降りて、部屋の外に出た。
案の定、部屋のプレートには「万華鏡の部屋」と書いてあった。
ふとリビングの様子が気になって行ってみることにした。
リビングのドアを開けて入る。
なんだか物が少なくなっているようだが、綺麗に整理整頓されていて自分の家じゃないような感覚に陥った。
さすが万華鏡...。
片づけは相変わらずなんだから。
綺麗なリビングを見て一人、普段はあまり動くことのない表情筋を動かしてどこか寂しげな微笑みを浮かべていた。
どこかで電話が鳴っている。
音の出どころを探るため、リビングを出て自分たちの部屋の前の廊下で音を聞いた。
音は私の部屋からのようだったのでドアを開けてその音の正体を確認した。
音は机の上に置かれた携帯で、画面には「赤司くん」の文字が。
携帯を取って、通話ボタンを押す。
「もしもし。柏木か?今どこだ?」
「...赤司くん。...家。」
「部活の開始時刻はとっくに過ぎているんだぞ。早く来い。」
今日は...何曜日...?
「...分かった。」
私がそういうと、電話はプツリと切れてツー、ツー、という音がした。
切れた携帯を机の上に戻して学校へ行く準備をする。