第19章 willingness
赤司side
昨日の部室にて・・・
虹村さんが俺の言葉を代弁して言ってくれた。
口調は強かったが、実力があるにも関わらずそれをわざとしないのは許せなかったから特に虹村さんをなだめるようなことは言わなかった。
偶然部室に居合わせた桃井も虹村さんに気圧されて何も言わない。
虹村さんが怒鳴ったあと、柏木は少し後ずさって一瞬怯えた顔を見せた。
だがそれはほんの一瞬のことで俺の他は誰も気づいていないようだった。
ドンッ
ふいになにかを叩くような大きな音が聞こえてそれが柏木が後ろ手にあった部室の壁を思い切り叩いた音だと気づくのに数秒かかった。
「....っ....!」
柏木は怒りに染まった顔で唇を噛んで俺たちの方を向いている。
なにか言いたげだったが結局なにも言わず、最後に持っていたカバンからノートだけを取り出して俺たちに投げて部室を出ていってしまった。
「...由良ちゃんになにか悪いこと、しちゃったのかな...。」
柏木が部室から出ていって皆呆然としている中、沈黙を破ったのは桃井だった。
桃井は落ち込んでいるようだった。
「いや...。桃井のせいじゃねぇよ。ちょっと俺も強く言い過ぎたかな...。」
虹村さんが虹村さんらしからぬ発言をして柏木が投げたカバンを拾い上げた。
「虹村さんは正しいと思います。」
「でもよ...。」
「今日はもう帰りましょう。また明日、この件については柏木と話します。」
でも柏木は今日、学校には来なかった。
家に行っても昨日とは別の人格が出ていて話も出来なかった。
それについては俺が甘かったと思っている。
昨日のうちに話しておくべきだったと反省している。
今日柏木に会って一つ気になったことといえば、名前を万華鏡と言ったか...?
あいつの一人称が「俺」だったということ。