第19章 willingness
「由良は信じてもらえそうもないことを自分で話すなんてことはありません。そういうことを話すのは由良自身が限界な時か本当に信用している相手だけです。」
目の前の赤司さんは急になにをという顔でこちらを見ている。
「部長が怒鳴った時にも言い返したいことはたくさんあったはずです。でもそれをしなかったんじゃないですか?」
「あ、あぁ...。」
「もし言い返していたら家がこんな荒れるなんてことはなかったはずなんです。」
壊されたものたちを見てため息をつく。
「...これをやったのは柏木なのか?」
「おそらく。」
随分と物分かりの良い人ですね...。
話がサクサク進んでいくこの感じ...すばらしいです...。
「テストの話に戻りますが、別に手は抜いてないと思いますよ。」
「...どういうことだ?」
「前に由良が言っていたんですけど、テストを前にすると無気力になってしまうそうです。」
「....。」
「俺も信じられないんですがね、そのせいでやりたくてもできない、と。由良もその状態に苦しんでいるので怒鳴られたことに対して理不尽だと感じて感情のコントロールが出来なくなってしまったんでしょう。」
「そう...だったのか。」
「とはいえ、由良にも非はありますし今回のことは仕方ありません。」
相手を落ち込ませないよう笑いかける。
赤司さんがそろそろ帰ると言ったので玄関まで送った。
「赤司さんは由良のこと、好きですか?」
「...嫌いではないよ。」
「そうですか。」
「もし...由良を泣かせるようなことがあったら許さないので覚悟しておいてくださいね。」
そう笑顔で赤司さんに言って別れた。
赤司さんが帰ったあと、リビングに戻って未だ汚い部屋を見てため息をつきながらも渋々片づけを再開した。
「さて、片づけ再開しますか。」