第19章 willingness
由良side
今日はテストが終わって返ってくる日。
テスト中は頭が悪くたって、苦手な科目だからといって人格を交代することはなかった。
テストは全部私が受けた。
窓の外を見ながら先生が前から名前の順で一人ずつ名前を呼ぶのを聞き流していた。
私の名前が呼ばれて前に行く。
「柏木、もっと頑張れ。」
テストを返す時に先生にそう言われた。
机に戻って返されたテストを見た。
点数は私にとっては良かったと思うけれど、先生にしてみれば赤点ギリギリでもっと頑張ってほしいところなのだろう。
次の授業で返された時も、その次も、またその次も同じようなことばかり言われた。
「もっと頑張りなさい。」
この言葉は嫌い。
頑張ることの意味が分からないから嫌い。
今日で全部のテストが返ってきて、テストを部活の前にみんなで見せ合いっこするのが伝統らしい。
嘘か本当かは分からないけれど、そんなことはどうでも良かった。
今日はテスト後初めての部活でみんなと顔を合わせるのは久しぶりな気がした。
なんだか青峰くんと黄瀬くんの顔がすっきりしていて晴れやかだ。
赤点を免れたのだろうか。
それともテストが終わって勉強する必要がなくなったからだろうか。