第18章 君のこと
俯いてスカートの裾をギュッと掴む。
もうあんな思いはしたくない....。
「柏木?」
赤司くんの声が聞こえてそっちをバッと見る。
「ご、ごめん...。ね、ねぇ、赤司くんの家族について聞かせて...。」
自分でも話の流れ的におかしいことは承知の上だったが、話題を変えなければ自分がおかしくなってしまいそうで怖くて焦っているようだった。
「俺の家族の話....?」
赤司くんも戸惑っているが、私に合わせてくれた。
「うん。仲、いいの?」
赤司くんの今の家族関係については知っているけど聞く。
「...母が生きていた頃は良かったが、今は...。」
「赤司くんのお母さんは優しい人だったの?」
「あぁ。とても...優しい人だった。」
「へぇ...。いいなぁ。」
ぽつりと本音が漏れた。
「柏木の母はどうなんだ?」
「....私のお母さんは...」
次の言葉が出てこなくて俯く。
「柏木?」
「....よく...分かんないや...。」
自分の母親のことがよく分からないなんておかしな話だと思うが、本当に分からないのだ。
自嘲気味に笑う。
「...父親は?」
「...いない。私の家、母子家庭だから。」
「そうか。すまない。」
「...謝ることじゃないよ。元々生まれてからお父さんて存在いなかったし。
...赤司くんはお父さんのこと、好き?」
「...難しい質問だな...。」
難しい...?嫌いなのかと思ってた...。
でも、その気持ちはちょっと分かる...。
「そういうことを考えたことがないから分からないな。」
困ったように眉をハの字にしてこっちを見る。