第18章 君のこと
「これは....ピンクのバラ?」
「うん。」
「何故、俺に?」
「....お礼。さっきの。....こんなんじゃお礼にならないけどこれが今の私の精一杯だから。」
焦って言葉をうまくまとめられなくて俯きながら赤司くんにピンクのバラを押し付けるように渡す。
「顔を上げてくれ。」
まだバラを受け取ってくれなくて顔を上げることができない。
「...今の私にはこんなのしかあげられないしこういうの気持ち悪かったら受け取った後に捨ててもいいから....!」
「柏木、勝手に話を進めるな。とりあえず顔を上げろ。」
「....受け取ってくれないと顔上げられない。」
俯いていると、赤司くんがため息をついた。
あ。呆れられちゃった...。
勝手に悲しくなっていると、赤司くんの膝が少し屈折したような気がした。
そのあとに俯いたために下がった視線となぜか赤司くんの視線が交わり合った。
驚いて顔を上げると、柔らかく微笑んだ赤司くんの顔が見えた。
「柏木、人にものをあげるときにはきちんとその人の目を見て渡すんだ。」
「...そういうものなの?」
「あぁ。」
改めて赤司くんに言われた通り目を見てバラを渡した。
「ありがとう。」
「....ピンクのバラは心を穏やかにしてくれるから好き。」
「そういう考え方はしたことがなかったな。」
「....私も。その考え方、教えてもらった。」
「そうか。」
「...だからこそ、好き。」
自分でもよく分からないが、とても穏やかな気持ちになった。