第16章 お菓子と彼と
外に出ると赤司くんが待ってくれていた。
先に帰ったかと思った....。
「虹村さんと何を話してたんだ?」
「....別に....何も。」
答えられなくてそっぽを向いた。
「俺には言えないこと?」
「....うん。」
顔を逸らしたまま頷いた。
「そうか。さぁ、帰ろう。」
「嫌。....赤司くん先帰ってていいよ。」
「それはダメだ。俺には柏木を家まで送り届ける義務があるからね。」
別にそんなこと頼んでないのに....。
頭では赤司くんが悪気はないって分かっているのにイライラしてきた。
でもここでキレてはいけない。
キレたら部室の時みたいに....
あれ?なんだっけ。
なにか重要なことがあったはずなのに、忘れちゃいけない大切なことが....。
「柏木?」
赤司くんが私の名前を呼ぶ。
落ち着け。
落ち着け。
ここが病院の前だということも忘れてうずくまる。
大丈夫。
大丈夫。
ゆっくり深呼吸しながら立ち上がった。
赤司くんには悪いが、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
ゆっくりとだが歩を進めて再び病院の中に入る。