第3章 転入生な私
「柏木由良さんね。」
校長室に行くと、おそらく担任だと思われる先生がいた。
「....うん。....はい。」
先生に対して敬語、ということを忘れていつもの調子で話してしまったのに気づき、慌てて敬語を使う。
「私は2年1組担任の田中です。これからよろしくね。」
優しそうな女の先生だなぁと思った。
「よろしく。...です。」
校長室を出て教室に向かう。
教室の前まで来ると先生に、
「私が入ってと言ったら入ってきてね。」
と言われたから待つ。
教室の中がざわついた。
転入生ってそんな珍しいものなのかなぁ?
「柏木さん入って。」
先生から合図があり、ドアを開けて中に入る。
私が入ってくるとさらにざわついた。
教壇に立ってみんなの目の前に来る。
「それじゃあ、自己紹介して。」
みんなの顔を大体見てみると、赤司くんもその中にいた。
「.....。」
「柏木さん?」
先生に名前を呼ばれて初めて自分がぼーっとしていたことに気づく。
「....柏木由良。....です。」
名前以外に言うこと....ってあとなにかあるっけ。
「好きなものはなにかしら?」
「好きなもの?
.....飴と日向ぼっこ。」
先生の方を向いて聞かれたことをこたえる。
「先生じゃなくてみんなに言いましょうね。」
先生に言われて、改めてみんなの顔を見て言う。
「....好きなものは....飴、と日向ぼっこ。...です。」
「趣味は?」
「...趣味?
うーん....寝ること....?です。」
先生がなんとなく困っているように見えた。
「....先生....。」
「なぁに?」
「もう、いい....ですか?」
「えっ、ええ、そうね。
柏木さんの席はあそこよ。」
そう言ってさされたのは窓際の一番後ろの席だった。
黙ってあそこに行く。
この席....眠れそうないい席....。
日が当たり、暖かそうな窓際の席が嬉しかった。