第16章 お菓子と彼と
保健室のドアが開く音がした。
誰?
中に入る足音が聞こえたが、気にせずホットミルクを飲む。
温かい無味の牛乳を啜った。
「柏木、ここか?」
仕切りをどけて制服を着た赤司くんがこっちに来た。
「....赤司くん。部活は?」
「終わったよ。先生は?」
「....先生って誰?」
「40代ぐらいの柔らかい雰囲気の女性がいなかったか?」
首を傾げた。
「....これくれた人?」
「それをくれた人かは知らないが、多分そうだろうな。」
あの人先生だったんだ....。
「....少し汗かいてるぞ。また悪い夢でも見たのか?」
「....うん。あ。赤司くん、これ飲む?」
「いや、いい。」
「....そう。」
黙ってホットミルクを飲む。
「美味しいか?」
「....ううん。」
「もしかして、まずいのか?」
「....ううん。」
「どっちだ。」
「....分かんない。」
「分からない?」
「....。」
そっぽを向いて黙る。
「柏木?」
「...普通の味。」
「そうか。」
黙っていたら問い詰められそうで怖かったから、適当に答えたら納得してもらえたようで良かった。