第16章 お菓子と彼と
体が震えて、息も苦しくて心臓の音がうるさくて自分が何をしたいのかも分からなくて全部嫌だった。
「...あ....う....。」
声も震えて喋れなくてつらかった。
でもその度におばさんは優しく抱きしめて、大丈夫、大丈夫と繰り返してくれた。
しばらくそうしていたら、体の震えも止まって息も苦しくなくなって心臓もうるさくなくなってきて落ち着いてきた。
「そろそろ大丈夫かしらね。ホットミルク持ってくるから離してくれる?」
そう言われて初めておばさんのエプロンを掴んでいることを知り離す。
「はい、ホットミルク。」
「....ありがとう。」
お礼を言うと、微笑んでくれた。
「熱いから気をつけて飲んでね。じゃあ、私、ちょっと職員室に用があるからそれまで大人しくしていてね。」
「....うん。」
頷くと、頭を撫でてもらえてうれしかった。
おばさんが出ていって初めて飲めるくらいの温かさになったホットミルクを飲んだ。
白湯みたい....。
これが一番初めに飲んだ感想だった。
いつからか味を感じなくなった味覚のせいで何を食べようが、何を飲もうが無味で食事をするのが苦痛で仕方なかった。
私が食事をしない理由はほかにもあるが、一番の理由はこれだった。