第16章 お菓子と彼と
「柏木、こんなところにいたのか。ん、紫原もここでなにやってるんだ。」
なんか違う声が聞こえてきた。
この声....誰だっけ....。
声のする方を向いてようやく誰の声か分かった。
「....赤司くん。」
「赤ちん、由良ちんがお菓子隠し持ってるのにくれないんだけど~」
「は?菓子?」
「....持ってないって言っても信じてくれない。」
赤司くんに助けを求める。
「紫原はどうしてそう思うんだ?」
「だってさ~、こんな甘い匂いさせてんだも~ん。」
「甘い...匂い....。紫原、俺も柏木が菓子を持っているとは思えないんだが。本当にその菓子の匂いは柏木からするのか?」
「うん~、絶対するし~」
紫原くんが私の頭に顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
「柏木、さっきまで誰かと一緒にいたりしなかったか?」
「....うーん....。」
あれ、さっきまで誰かと一緒だった気がするのに....。
....誰、だっけ....。
あれ....?私、紫原くんが来るまで何してたっけ。
「柏木?」
「....分からない。」
結局自分がなんで中庭にいるのか、紫原くんが来る前まで何をしていたかが思い出せなかった。