第16章 お菓子と彼と
一人残されて、虹村さんが行ってしまった方向を木にもたれながらじっと見ていた。
しばらくして、チャイムが鳴った。
今5限が終わったんだ....。
長かった。
ここでゆっくりしていた時間はいつも教室で過ごしていた時間よりもゆっくりで長く感じた。
「あれ~、由良ちん、こんなとこでどうしたの~?」
空っぽの頭ではこれが誰の声か判別できなかった。
なんとなくだるい頭を声のする方に向ける。
「....紫原くん。ちょっと....休憩してただけ。」
「ふーん。てか由良ちんからいい匂いするんだけど~」
「....いい匂い?」
「うん~。なんか甘い匂いがする~」
「甘い....匂い....。」
「なんかお菓子持ってんの~?」
いや持ってないよ....。
普通に見て私の周りのどこにお菓子があるように見えるの?
「ね~、お菓子ちょうだ~い。」
「....持ってないってば。」
「嘘だ~。絶対持ってるし~」
-回想終了-
というわけでお菓子をねだられてます。
持ってないと言っても信じてくれないし、紫原くんが悪いわけじゃないのにその間延びした口調にそろそろイラついてきた。