• テキストサイズ

漆黒の髪のマギ

第1章 旅の始まり


あれから、大分進んだこの道。


何事もなく進めているのが、本当にありがたいことだとアリババが呟いていた。


しかし、そんな時に私は何だか妙な気配を向こう側から感じ取った。


大きな"何か"がいる。


それを知った瞬間、私達の右側の砂漠に大きな穴が開き、怪物が現れたのだ。


奴隷達の荷車も私達の荷車もそれによってひっくり返る。


アリババが急いで荷車を止めようとしても、それは叶うことなく倒れてしまった。


それと同時に勿論ぶどう酒も全てころころと転がり落ち、ぽっちゃりさんが慌てて酒の収集にまわったのだ。


アリババもその人に命令されて急いでぶどう酒を集める中、私はぽっちゃりさんの真後ろに小さな子供がいることに気づいた。


『あ、危な──』


しかし、気づいて手を伸ばした時には遅く、その小さな子はぽっちゃりさんにぶつかりその大きな穴…怪物がいる所へと落ちてしまったのだ。


それを見て私は慌てて助けに行こうと一歩踏み出す。


しかし、そんな私の事をアラジンは止めてきた。


こんな危ない時にどうしてアラジンは止めてくるのだろうか。


そう疑問に思いながらも私は不安でいっぱいの中、その様子を見た。


「よし、あいつが"エサ"を食ってる間は安全だ!急げ!」


そうぽっちゃりが叫ぶ。それに私は唇を噛み締めながらアラジンを見た。


何故助けに行っては駄目なの?アラジンはそんな子じゃない筈なのに。


そう強く思いながら流石に我慢できなくなった時。


「ふざけんな!!!酒は金で買えても、人の命は金で買えねぇんだよ!!!!」


なんとアリババがぽっちゃりを勢いよく殴り、酒を1つだけ持ってなんの迷いもなく穴に飛び込んだのだ。


それには私も周りの人も驚く。


その犠牲になっている子供の母親も、今はアリババに頼る事しか出来ない。


ぽっちゃりはそんなアリババを見て鼻で笑っていた。


もう怒る気力さえなくす。


私はただひたすらにアリババのその勇気ある姿を見ていた。


やっぱり、彼は間違えなどではなかった。アリババは正真正銘、強い心を持った優しい人である。


そう思って、私とアラジンは頷きあった。


そっか、アラジンはこれのために私を止めたのね。


そう理解しながら、私はネックレスを握った。
/ 42ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp