第1章 旅の始まり
今さっき。アリババとアラジンは私に大事な用があるからと言ってどこかへ出掛けてしまった。
アラジンには危ないからアリババの家にいてくれと言われ、今私は待機中である。
改めて部屋を見渡してみると、アリババがどんな生活をしているのかがよく分かる。
そして、アリババのさっきの言葉を思い出してみた。
ダンジョン攻略。
そこは誰もが帰ってくることがない場所と聞いた場所だ。
そんな場所に私達は行こうとしているんだ。
それがどんなに危険かは流石の私でも分かるものだ。
だけど、何だかこの3人なら攻略出来そうな気がして少しウキウキしていた。
そして、それから暫くして2人は身体中に口紅の後を着けて帰って来たのだ。
これはもう、無視を決め込もう。
そう決めて、何回も2人から謝られた1日だった。
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次の日。
アリババが今日はあのぽっちゃりさんの元でまた働くというので、私達も同行することになった。
どうやら今回はぶどう酒を運ぶそうで、何だかアリババがやけにぽっちゃりさんに愛想が良いので、気になってアラジンに聞いてみた。
すると、どうやら昨日の夜、私がいない時に色々もめたそうで、結局こうなったとアラジンが珍しく呆れながら話してくれたのだ。
私も何となくは予想してたからあんまり驚かなかったけれど、予想通りすぎて笑うレベルである。
そうしてなんだかんだ、私もアラジンも運転手のアリババの隣に座って出発した。
しかしよく周りを見渡してみると、近くにあった荷車には奴隷達が乗っているのだ。
それを見て私は手をギュッと握り、頑張って感情を押し殺した。
「……俺もきっとユキと同じ気持ちだ」
『………ええ』
隣にいる運転手のアリババは、手を強く握る私にボソッとこう呟いてくれた。
私にはこんな彼が、正しい心を持つ勇者に見えたのだ。
だけど、まだ彼の事はもう少し様子を見てみる。
アラジンもその目を見ると、同じ事を考えているのだと思えた。
アリババはいつもこのぽっちゃりさんの言う事にただ明るく返して、自分の感情を押さえ込んでいるから。
彼がどう動くかは、もう少し見るとしよう。