第1章 旅の始まり
不思議に思って口を開こうとした時。
「なんだなんだ、何の騒ぎだ?」
『うわ……』
昨日私が蹴り飛ばしたあのぽっちゃりさんがやって来て、私とアリババは目を合わせた。
そしてぽっちゃりさんはすぐさま赤髪の少女の鎖がとれていることに気づき、すぐ側にいたアリババを睨み見た。
それから何だかニヤリと笑いアリババに話しかけるぽっちゃりさん。
「またお前か。ろくなことしないな。お前奴隷にされたいのか」
それにきれている暇もなく、ぽっちゃりさんはその赤髪の少女の髪を突然引っ張って笑い出したのだ。
「奴隷は辛いぞー?こんなことされてもこんなことされても…何にも口出し出来ないんだからなぁ」
頭を踏みつけ、髪の毛を引っ張り、地面に叩きつけるぽっちゃりさんを見て、私の頭の中で何かがキレた。
しかしそれと同時に、アラジンも何か思ったようで、笛をまた吹き……ウーゴ君を出した。
それにはその場にいる全員が目を点にする。
私とアラジンだけが笑い合い、そしてウーゴ君の大きな手はぽっちゃりさんや兵士を勢いよく叩きつけたのだ。
そして仕上げに私はぽっちゃりさんが倒れている更に上から蹴りをかまして、ぽっちゃりさんは勿論気絶をしたのだった。
『こんな女の子にまでそんな事するなんて、貴方最低の何者でもないわ、汚い人間ね。って、もう聞こえないかしら?』
「ユキは相変わらずだねぇ」
『そうかな?』
もう口を開かないぽっちゃりさんの上に立ちながらアラジンと話す私。
周りの人も赤髪の少女もアリババも皆キョトンとしてその場を動こうとしない。
そしてそんな固まる空気の中、向こうから何事かとやって来た兵士達がたくさんやって来た。
それを見た瞬間に、私とアラジンはアリババに勢いよく腕を引かれてこの場を去ったのだった。
気づけばいつの間にかあの赤髪の少女は姿を消していて、もう話すことはできなかったのだ。
ひたすらにアリババに腕を引かれながら向かった先は、またあの古い家。
そこで私はアリババに質問攻めされることとなる。