第1章 旅の始まり
青年から聞く話しだと、ダンジョン攻略とは誰もが簡単にできるものではないらしい。
今までダンジョンに入った者は、絶対に帰っては来なかったのだと。
それを青年は攻略したいと願っていた。
「それにな、金さえあれば旨いもんいっぱい食えるし寝る場所だってあるし、綺麗な女だって手に入るんだぜ!金さえあれば男はモテるからなぁ」
お金の話で盛り上がり始めた青年はそう言いながら目を輝かせた。
この青年はモテたいのか。そう疑問に思いながら首を傾げていると、そんな綺麗な女という言葉にアラジンが反応したのだ。
「綺麗なお姉さんかい?いいねぇ!」
「だよな!お前よく分かってるなぁ!」
「うんうん!!」
と、何だか女の私が目の前にいる中2人は話し出して更にテンションを上げていった。
でも、青年が何だか楽しそうなのでいいかななんて思いながら私も微笑んだ。
「あ、そうだ。君の名前はなんだい?」
そんな楽しい空気の中、アラジンが思い出したように青年に問いかけた。
私達の事は自己紹介したけれど、思えば彼の名前を聞いていなかった。
それには私もアラジンと同じく身を乗り出して聞く。
すると、青年は少しふふんと笑いながら立ち上がり宣言した。
「俺の名前はアリババだ!」
「アリババくんかい?」
『アリババ』
何となく上から目線の彼に私とアラジンはこう答えた。
するとアリババは少しずっこけながら私を見てこう言ったのだ。
「いきなり呼び捨てかよ……まいいけど。って、名前教えた所で、お前らとはもう関わらないだろうから忘れてくれていいぜ」
折角名前を覚えたと思ったらアリババはこんな事を言ってそこの布にくるまった。
ここは古くて崩れそうな家。
彼はこんな古い家がただきれいになったりするのを本当に望んでいるのだろうか。
そう思いながら私とアラジンもそこら辺にねっころがり適当な布を使って眠った。
ダンジョン攻略。
それはどんな物なのだろうか。
アリババ、彼はどんな人なのだろうか。
そんなたくさんの期待と疑問を抱えながら私は眠りについたのだった。