第1章 旅の始まり
「はぁぁぁぉぁぁぁあ」
現在、青年の家。
目の前には頭を抱えて大きな溜息をつく金髪の青年が。
隣には私より背の低い可愛いアラジンが。
そして私は苦笑いしながら青年の事を見ていた。
「お前何者だよ!?何なんだあの蹴りは!人間とは思えねぇ……」
『……?人間よ?』
「それは分かってる!例えだよ例え!」
『???』
「はぁぁぁぉぁぁぁあ」
本日、50回目の大きな溜息。
私とアラジンはさっきからずっとこれを見ていたのだ。
どうやらあの時蹴った人が機嫌を損ねちゃ駄目だった人のようで、私は既に怒っていた人を更に怒らせたらしい。
なので、目の前の青年はずっとずっとこうしてぶつぶつと何か言っているのだ。
私的には、良いことをしたつもりなんだけれど…この世界は難しいものである。
「ま、まぁ許しておくれよ…ユキは悪気があった訳じゃないんだ」
「あぁ…助けてくれようってんのは分かるけどよ…明日からどうすりゃいいんだ…」
アラジンが私を庇って話すと、その青年はさっきよりも沈んで頭を抱えた。
どうやらこれは、かなりまずい事をしたらしい。
と、今頃気づく私も私だけど。
とにかく励まそうとアラジンと共に顔を合わせながら考えていると、青年はぼそりと何かを語りだした。
「まぁでも…あんな奴に俺は負けねぇよ。いつかダンジョンクリアして、大金持ちになって、あいつなんかぎゃふんと言わせてやるんだ」
『……ダンジョン?』
語りだした青年のその瞳はとても強く光っていて、"本気"を感じさせられた。
そのダンジョンとは何なのか分からないけれど、青年は何か大きな事を目標にしているんだということは私でも分かった。
そしてそのダンジョンというものを知らない私とアラジンは首を傾げながらそんな青年を見る。
ネズミが行き交うこの古い家の中、静かな空気の中青年は更に語りだした。
「お前らダンジョン知らねぇのか…。ダンジョンってのは、14年前に突然現れた建物の事だ。なんだってそこにはたくさんのお宝や珍しい魔法アイテムがあるんだってよ」
そう輝きながら話す彼に私とアラジンはとてつもなく興味なさそうにへーと答えた。
それにまた溜息をついて沈んだ彼を私は少し面白いと思ったのだ。