第3章 煌帝国
そう少し申し訳なく思いながらも、私は紅覇に訳を説明した。
紅覇を探しに出たら何処にもいなくて、ここに来る途中紅明に会ってここまで案内してもらったこと。
それらを説明すると、紅覇は怪訝な顔をしながらも頷いてくれた。
そしてそれと同時に、私はあの兄王様と呼ばれる人に話しかけられたのだ。
「ではお前が紅覇の言っていたユキという奴か」
『そうよ』
私を試すような瞳。
そんな強い眼差しでそう言われて私はまったく怯まずに答えた。
すると、一瞬の間があり、やがて彼は少しだけ笑って尚も話してくれたのだ。
「そうか、俺は練紅炎という。これからの長い間、お前は紅覇を守りこの煌帝国に尽くしてくれ」
意外にもあっさり認められて、私は少し呆気に取られてしまった。
しかし、その紅炎の言葉に私はすかさず首を横に振ったのだ。
ここにもしあの槍人間がいたならば、今の一言で空気が凍りついていることだろう。
だけど幸いにもここにいるのはこの4人だけなので、そういうことはなかった。
『私は、ここをなるべく早く出なければならないの。助けてくれた事は本当に感謝してるし、ここにいたいけど』
そうきっぱり言う。
すると、そんな私の言葉に反応したのは紅炎ではなく紅覇だった。
彼は何だかしょんぼりしているように見える。
「なんだ~、ユキは何処の国の奴なの?」
そんな残念そうな声で訪ねる紅覇の言葉に私は返答に困る。
だって、私には自分自身の"国"がないから。
そう、思って。
『…私に国はないわ。ただ、大事な友達とはぐれてしまったから早く会いたいだけ。出来るなら今すぐに』
頭に、アラジンやアリババやモルジアナの事を思い浮かべて私は言う。
すると、それまで私の話を黙って聞いていた紅明が今度は口を開いた。
「はぁ、友達とは?」
その問いかけに、私はすぐに答えた。
チーシャンで出会った勇気ある人、本当は優しい心を持っている人、ずっと一緒にいる大事な人。
『その人達は、アラジン、アリババ、モルジアナっていう3人なの。ダンジョン攻略が終わってから皆はぐれたみたいで…』
「お前、ダンジョン攻略者だったの!?」
「なんと……」
「…………」
私の言葉に一気に驚く紅覇。