第3章 煌帝国
しかし、それを見た瞬間に周りにいた槍を突きつけてきた人達が何だか険しい顔をしてその紅覇と呼ばれる人を制止した。
私が気になる事は、この練紅覇という人がどんな人なのだということである。
同じ人間である筈なのに、この人達はやけに紅覇には礼儀正しい。
「そ、その…紅覇様…また正体の分からぬ怪しい奴を率いれるのですか…?」
「そうですよ紅覇様…もしかしたら私達に探りを入れてきた人間やもしれませんよ…」
頭を低くしながら遠慮がちに言ってくるこの人達。
私は怪しい奴扱いをされて当然良い気分にはなれなかった。
すると、それを聞いていた紅覇はジッと人間達を見下ろして冷たい目で彼らを見つめたのだ。
何だかそれだけで彼に殺されてしまいそうな、そんな雰囲気である。
そう、少し怖いと思いながらも紅覇を見ていると、彼はやっと口を開いた。
「…お前達、殺されたいの?」
「っ!」
ザワッ………
『…………』
彼の一言に、その場にいた全員が青ざめた顔をした。
つまり、この人にとって殺すとは冗談では済まされないという意味なのだろう。
だからこんなにも一言喋っただけでこの人を恐怖におとし入れる事が出来るのだと思った。
そう納得しながらも私は紅覇に腕を引かれて何処かへと連れていかれた。
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「ほらユキ、お前はこいつらに新しい服選んで貰って身体を綺麗にしてきな。お前ならきっと美しくなる」
『あ、分かったわ…』
あれから、着いた場所はある部屋であった。
勿論造りなどは変わっていなくて、そこらじゅう赤い建物ばかりの所だったけれど。
そう少し感動しながらもぼーっとしていたら、紅覇がこう言って近くにいる3人の女性を指差したのだ。
彼女達はとても優しそうで、私は安心できた。
そしてそれだけ言うと紅覇は外に出てるから出来たら教えてと言いながら去っていった。
何だか、本当に優しい人である。
「まぁ、可愛らしい女性ですわね」
「さぁさぁ、紅覇様に言われた通り、この服に着替えなさい。そうしたら髪を綺麗にしましょう」
何をしていいのか立ち止まっていると、その女性が微笑みながらこう言ってくれた。
なので私も心を許して彼女達の言うことを聞いたのである。