第1章 旅の始まり
『な、何するの!?』
「うぅ、お兄さん、痛いよ」
果物のあった荷車から放り出された私達2人。
投げられて強打した頭をさすりながら私とアラジンはその金髪の青年を見た。
何故あんなに怒っているのだろうか。
「こ、これはなぁ!!」
怒る青年が眉間にシワを寄せながら私達に怒鳴ろうとした時、向こうから何だかぽっちゃりとした人が彼を睨みながらやって来た。
いや、元々睨んでいるように見える顔なんだろうけど。
そしてその荷車にたどり着きそのぽっちゃりさんは青年を見てこう話した。
「おい運転手、例の物はどんな感じだ?」
何だか凄く嫌味ったらしく言ってくるこの人を、私とアラジンは黙って見ていた。
例の物、とはきっと私達が食べたあの美味しい果物の事なんだろう。
青年が何だかそわそわしてるから。
この人がどんな人なのかまったく分からないのに、何だかぽっちゃりさんは悪い人なのかな、とは少しだけ思った。
そして青年は冷や汗をかきながらへらっと笑い口を開いたのだ。
「も、勿論そのまま安全に全てございますあははは……」
『………』
何で嘘をつくのだろうか。
そう思った後、私はその理由を知ることになる。
ぽっちゃりさんはそんな青年の様子を見てから舌打ちをして荷車の中を確認した。
勿論そこには私達が食べ散らかした果物が散乱しているわけで…途端にぽっちゃりさんは青年の頭を勢いよく踏みつけてそのまま大声で話し出した。
「何が全て安全にございますだ!!この役立たず!!」
そのまま青年の頭を踏み続けるぽっちゃりさん。
青年はそれに手をギュッと握りながら我慢していた。
それを見て、私は地面をとんとんと3回蹴り
ガンッ
と、そのぽっちゃりさんを勢いよく蹴り飛ばした。
「。」
青年が唖然としながらそんな私を見てからぽっちゃりさんの事を見る。
私はぶっ飛んでいったぽっちゃりさんを眺めてから青年に手を伸ばす。
そして向こう側で何か色々と言っているぽっちゃりさんを無視して私は青年に笑いかけた。
『大丈夫?』
これが、アラジン、私、青年との出会いであった。