第2章 友達
「領主……様?」
そんな情けない状態になった領主の前には、アラジン。
それを見てモルジアナは驚いていた。
「えっ…あの少年…今までここにいた筈なのに!」
その事に気づかない程、貴方は戦いに必死になっていたのよ。
そう心の中で呟いて私はゆっくりとモルジアナの前を歩き出した。
最初から、私はアラジンを信じてアリババの事を任せていた。
…きっと、アラジンが助けをいれなくてもアリババならあんな領主に勝てると信じていたし。
そう思いながらも私は2人の元に近づいた。
「お、おいユキもアラジンもスゲーよ!凄すぎるぜ!」
傷ついた身体のアリババはそう言って笑った。きっと領主にまた蹴られたのだろう…
アラジンもそんなアリババを見て微笑んだ。
そして私は、一瞬で無表情に戻り領主を睨み付けた。
「な、なぁ…マギの女神……ファナリスの漆黒の女神様!僕を王にしてくれるんだろう!?そうだろう!?ずっとこの時を待っていたんだ!!ずっと僕はこの日のために奴隷を痛め付けて教育してきたんだ!確信したよ、貴方は正真正銘、僕の女神様だ!」
「…は?この領主何言ってんだ?ユキがファナリス?マギ?女神?」
訳の分からない事を言い出した領主の言葉に、すかさずアリババが突っ込みを入れる。
そして私は無表情のまま領主の側で止まり座り込むその人を見下ろした。
「あ、あぁ勿論あの少年のマギもですよ女神様!貴方の大切な人なんでしょう?そうだ女神様、僕を王にしてくれたら貴方を僕の妃にしますよ!!ほら、こんな嬉しい事ないでしょう!?」
ひたすら喋り続ける領主。
そしてこんな言葉を領主が言った瞬間、後ろからアラジンの声が聞こえた。
「ユキは絶対に君の妃になんかならないよ…」
「お、おう!お前なんかがユキに釣り合うもんか!!」
アラジンに続きアリババがまた突っ込みを入れる。
そんな2人の言葉を聞いて少しだけ笑い、私は領主を睨み付けながら言葉を発した。
『私のネックレスとアラジンの笛、返してちょうだい』
「…ぼ、僕がそう簡単に返すと思うのですか?王にしてくれると言ってくれれば返しましょう!!」
私の言葉に悪い顔をして笑った領主に私は溜め息をついた。