第2章 友達
「この下民がぁぁぁあ!!下民!クズ!」
アリババの言葉に領主はひたすらこう叫び続けた。
そしてアリババが領主を相手にしているうちに、私はアラジンを確かめた。
大丈夫、ここからだけど私ならアラジンまですぐにたどり着けるわ。
そう自分自身に自信をつけて私は小さく2歩下がった。
それからすぐにアラジンの元へ向かう。
「!?何故そんなに速いの!?まるで貴方もファナリスのようだわ…っ」
そして瞬時に移動した私に、モルジアナがこう言いながら追いかけてきた。
そう、私はファナリス。
あの"頑丈な部屋"から出る前にウーゴ君に言われた事。
だけど、ファナリスなんて言われても私には分からない。
そう思っていたら、私はアラジンの元についた。
「……ユキ……?」
『アラジン!大丈夫…?』
横たわる私の大事な友達をそっと起き上がらせる。
するとアラジンは少し苦しい顔をしながら向こうを指差した。
「駄目だよユキ…あの子が来てしまう!」
今はアラジンの方が辛い筈なのに、私の事を心配する彼に微笑みながら私は立ち上がった。
そしてこちらを睨み付けてくるモルジアナを私は悲しい顔をして見つめ返した。
『………』
「…私は…先程の貴方の言葉が嬉しかった…。だけど私は奴隷……一生この身分から解放される事はないのです、おかげで目が覚めました。私はなんて馬鹿な夢を見ていたのだろうと!」
そんな事を言って、モルジアナは私にひたすら攻撃してきた。
それを私は避け続ける。
そして、ずっと攻撃が避けられるモルジアナはだんだん汗をかいて焦りはじめてきたのだ。
「何故…何故なの…!攻撃がまったく当たらない……っ」
『……………』
領主の事をチラチラと見ながら焦るモルジアナ。
私は無表情のままそんな彼女の攻撃を避けていた。
やがて、体力がつきてきたモルジアナはその場に倒れるように座り込んだ。
「…嘘よ…攻撃が……」
『…もう止めなさいモルジアナ。貴方は一体"誰のために"戦っているの…?』
「え……?」
絶望しきった顔のモルジアナに私はそう言って向こうの領主を指差した。
そこには、もはや何も話すことのできないだろう情けない領主の姿があったのだ。