第2章 友達
故郷に行きたい、そう呟いたモルジアナに私は笑顔を向けた。
『ほら、貴方にはちゃんと夢がある。それは素晴らしい事なのよ?だから、どうか自分の生き方に行き止まりをつけないで?』
輝く瞳のまま私を見つめるモルジアナにそう言えば、彼女はとても嬉しそうな顔をした。
と言っても、本当に逃してしまいそうな程小さな喜びだったので、きっとあの領主ならば気づかないだろうと思ったけど。
しかし、それは一瞬で、モルジアナはすぐに曇った顔をして再び下を向いてしまったのだ。
「……って……何故貴方にこんな話しを…忘れて下さい」
折角少しだけでも打ち解けたと思ったのに、モルジアナはまたあの悲しい表情になる。
私はそれが少し残念でその少女を見つめた。
『…やっぱり、あの領主からの鎖がモルジアナを縛っているの…?』
「えっ…」
モルジアナの生き方を決めつける張本人の名前を出せば、彼女はとても分かりやすく反応した。
これでもう確信的である。
彼女を縛り付けるたった1つのものは、あの領主だ。
あの領主さえモルジアナの前からいなくなれば、彼女は絶対に幸せになれる。
そう思った。
だから私は、最後にモルジアナに向かってこう呟いた。
『貴方にとって領主とは、絶対に逃れられない者だと思っているかもしれないけど、貴方だっていつでもあの人から解放される方法があることを忘れないでね。私の友達のモルジアナが、夢を叶えられる事を、願ってるわ』
「っ!」
それだけ呟き、私は微笑んだ。
そしてその途端にアラジンが私の事をターバンに乗せてくれ、アリババもまた同じくターバンに乗った。
モルジアナはそれを見てもボーッとしていて、やがて我に戻り壁を伝ってきた。
今の話しで、少しでも彼女の心に響いた事を願って…
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そして今。私達はある大きな扉の前にいた。
あれからモルジアナにたどり着かれる事はなく、無事にここまで来れたのだ。
そしてそこでアリババは嬉しそうな顔をする。
「いやー、2人供無事でほんとに良かったぜ!」
そう言って凄く喜んでくれるアリババに、私もアラジンも何だか嬉しくて頷いた。
それはこちらのセリフである。
そう思って私とアラジンとアリババは、また顔を見合わせ笑い合った。