第2章 友達
すると領主は一瞬真顔になったものの、すぐに笑顔になり私の頭を乱雑に撫でてきた。
「まぁ今はあまり状況が理解できなくて不安だろうが待っていて下さい。それに、あの金髪のガキは貴方様とそちらのマギ様の笛とネックレスを盗んでいきましたのでそれもついでに取り返してきましょう」
なんて、あくまで善人ぶっているこの人が私にはどうも悪い人にしか見えなくて、睨むことを止めなかった。
すると、流石に諦めたようで、逃げるように領主はこの場を去って行ったのだ。
それから私はすぐにアラジンを見る。
『アラジン、無事で良かったわ!』
「それは僕のセリフだよ、ユキの事凄く心配していたんだよ?目が覚めたら君が気絶していたんだもの」
目が合った瞬間に私達はお互いに安全を確かめあって一息ついた。
アラジンもどうやら心配してくれていたそうで、2人して溜め息をつく。
やがてその話しはすぐにアリババの話題になった。
『…アリババは?』
「それが、僕にも分からないんだ。気づいた時にはアリババくんがいなくて…」
『………』
聞いた話しだと、アラジンの記憶はあの緑の怪物が出てきた所でストップしていたらしく、状況をあまり理解できていないのだと。
それを聞いて私も頷く。
私はアラジンより記憶が残っていても、アリババの行方は知らないのだから。
そう思っていると、そこで黙って立っていた赤髪の少女がぼそりと私達に呟いた。
「……貴方達の友人は……」
『?』
何だか苦しそうな顔をして言葉をつまらせる赤髪の女の子に、私は首を傾げた。
この子はきっと、アリババが何処にいるのか知っている。
そう確信していたので、私はその子が話せるまで待ったのだ。
そして発せられた言葉。
「あ、貴方達の友人は死んでしまいましたよ!!」
その言葉と共に、私には冷や汗が出て、そして3秒くらいたった頃に私の目にはアリババが見えた。
死んだ筈のアリババが。
それに私は大混乱してアラジンと目を合わせたが、どうやらアラジンも同じだったようで赤髪の女の子と死んだ筈のアリババを交互に見ていた。
そしてそのアリババはというと、何だか元気よくこっちに手を振っていた。