第2章 友達
"マギ"、そう呼ばれた瞬間私は眉を寄せた。
この人は何を言っているのだろうか。そもそもマギとは何なのだろうか。
その疑問を、口にする事はしなかったけれど私は今はそんな事より酷く扱われたアリババが気になって仕方なかった。
助けに行こうにも、アリババを蹴り飛ばした張本人の女の子がそれを許すことはなかったのだ。
その事に私はさらに眉間にシワを寄せる。
「…ユキ…その人は領主だ!」
すると、先程蹴り飛ばされた筈のアリババが顔を起き上がらせてこう伝えてくれた。
領主…偉い人の事だ。だけど何だろう、何だかこの人からは嫌な印象しか伝わってこない。
そう思いながらも私はその領主を見た。
「下民ごときが領主だと?…様もつけられないのかこのクズ」
するとその途端に、領主は近くで倒れ込むアリババの頭を勢いよく踏みつけて蹴り続けた。
更には剣を出す始末である。
私はそんないかれた領主を睨み付けて片足をあげた。
『…………』
こんな人間は、私が遠慮なく倒してやる。
そう思って力を込めながら領主にその片足を降り下ろした。
しかし。
「領主様!!」
後ろからあの少女の声が聞こえたと思ったら、私はその子に勢いよくお腹を蹴られてしまった。
『っ!!』
「っ!ユキ!!」
そして、アリババの声を最後に私はふらりと意識を手放したのだ。
どうして…あの子はこんな人間に付くような子ではない気がしていたのに…
世界とは、まだまだ分からない事だらけである。
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何かに揺られて目が覚めた。
すると、まず目に入ったのはこちらを見て笑顔になるアラジンであった。
やがて、私は今どんな状態なのか知る。
私は領主以外のもう1人の大きな人に肩にぶら下げられていて、今領主に起きた事がバレた。
「お目覚めですねマギよ。ちょうど今から俺とその貴方を背負う男とで先に進む所だったんですよ。あの金髪のクズ男は貴方を無視して逃げました。なので俺が変わりに安全を確認してきますね」
『…………』
さらさらと嘘を発するこの男を睨み付けながら私は地面に降りた。
アリババはどうしたの?アリババを何処へやったの?
そう憎しみを抱きながら私は領主をただずっと睨んだ。