第1章 こたつの虜/達海猛
達海は休憩している選手たちを広いミーティングルームへ移動させた。と言っても、選手たちの元へ向かい、その旨を伝えたのは松原だ。
「まったく、人使いが荒いんだから……」
「本当。タッツミーは容赦ないよね」
「じ、ジーノ……」
うなだれている松原の肩を叩いたのは、ルイジ 吉田。ジーノと呼ばれることも多いが、"王子"とも呼ばれている。イタリア人と日本人の間に生まれ、鼻の高い貴族の様な面持ちと、彼の性格からそう呼ばれているようだ。
「僕もさ、タッツミーには振り回されてるからね」
「王子も人の事言えないっスよ。俺と椿のこと、散々振り回してるし……」
ジーノの後ろにいた赤崎がため息交じりで言った。
「君たちは僕の犬だからね。走ってもらわなきゃ困るよ。それとも……僕からのパス、いらないのかい?」
「いや、それは……」
「じゃあ、不満はないね?」
「監督といい勝負だな……」と松原と赤崎は心の中で呟いた。
「よぉーし、みんな集まったな! ミーティングすんぞー!」
「おい、お前! 今まで何してた!?」
パッと現れた達海に向かっていったのは血の気の多い黒田。しかし、彼と同じことを思っている選手がほとんどだろう。
「まーまー。んな怖い顔しないの! ほら、こたつとみかんを用意したぞ! さ、体を冷やす前に入れ入れ!」
そう指示する達海の横で、は呆気に取られていた。
「うち(ETU)しかやらないでしょ? こんなミーティングは」
「ぜ、前代未聞です……こんなの」
「ははっ! だろーね!」