第8章 元日生まれのあなたへ/流川楓
これが、流川楓。私の大好きな人。
「……腹減った。飯」
「何食べたい?」
「お前の作ったのが食べたい」
「えー。たまには、外食したい」
「ヤダ」
「流川のアホ!」
身を寄せ合い、家路を目指す。
来年も再来年も、一緒に誕生日を過ごして、新年とあなたの誕生日をお祝いしたい。
「……好き」
「……好き? え? 今、好きって言った?」
嬉しさのあまり、ニヤケ顔で聞き返してしまう。そんな私のおでこを彼はコツンと叩いた。
「お前の手料理の話だ」
「……手料理ね。たまには、作ってる人の事も好きって言ってよ」
ジッと見つめたあと、彼は軽く口付けた。
「これが、その証」
こう言われてしまっては何も言い返せない。
悔しいから、私も彼の肩にグッと力を入れ、唇を重ねた。
「私も、の証」
ドヤ顔で言い放つも、これが負けず嫌いの闘志に火をつけてしまったようで、これでもかと熱い思いが口移しされる。
愛され過ぎて、目眩が起きそうだ……。
「どあほう」
何事も無かったように、彼は先に歩き出す。
その後を追いかけ、私も歩き出す。
元日生まれのあなたへ。
そんなあなたが私は大好きです。
元日生まれのあなたへ/流川楓【完】