第1章 こたつの虜/達海猛
何を考えているのか分からない達海 猛。
この人には常識も型も何もないのかもしれない。
だから、彼が次はどんなサッカーを見せてくれるのか期待し、待ちわびてしまうんだろうな……。
そうは、達海や選手たちを見て感じていた。
「俺たちはさ、こうやってでしか強くなれないんだ」
「……え?」
「"絆"……目に見えないところを固めて連携を深めることで、自然と仲間をフォロー出来るようになる。弱小チームは、みんな目指す所が同じだから一度結んだ結び目は簡単には解(ほど)けない」
確かに……。とは納得した。
選手たちに目をやれば、みな同じ目をしている。……王子を除いては。
「記者さん。 ……今度、食事でも行かないかい?」
「あいにく仕事がキツキツでして……」
「残念。気が向いたら、連絡してね」
「はいはい。ほら、お前も席着く!」
「僕、むさ苦しいの苦手なのに……」
去年までとはチームの雰囲気がガラリと違う。
たった一人、監督が変わっただけなのに……。
「じゃ、記者さんはここまで」
「へ? あ~、そうですよね! 作戦会議ですもんね! じゃあ、みなさん! 最後に1枚撮らせてください!」
"こたつ・みかん……
たった2つのアイテムでETUは更に強く進化を遂げるだろう。来シーズンもETUから目が離せない!"
この記事と共に楽しそうに こたつに入り、身を寄せ合う選手たちと監督・コーチ陣の姿が誌面を飾った。
「おい、! 何なんだ、あの記事は!」
「こたつ・みかん、うちのオフィスにも置きましょう!! 絆ですよ、絆!!」
「あ~、またお前は訳の分からないことを……」
こたつの虜【完】