第7章 春色桜恋印/石田三成
純白の肌に、ほんのり赤く色づいた頬。庭に目を向ければ、同じ色をした花びらが舞っている。
「私は と申します。三成様が赴任される前の方の時から女中として、こちらでお世話になっております。前の方は、部下に対しても敬意を払われる心優しいお方でした」
膝の上に置かれた手に力が入る。娘はキュッと着物を握りしめた。それは、"何か"を覚悟したかのように。
「ですが、三成様は部下の方をお叱りになってばかり」
三成の耳が痛たんだ。きっと、部下たちも……そう思った時、側にいる部下が刀に手を掛けた。
「貴様!! これ以上、三成様を侮辱すると娘であろうと許さぬぞ!!」
「……待て。最後まで話を聞こう」
スッと手を出し、部下の気持ちを三成は宥(なだ)めた。
「でも、今日分かったんです。三成様が部下の方々から好かれていることを。私の元に来た方々は皆、笑顔で三成様のお話をされていました」
「……あの馬鹿者共め……」
口では皮肉を言っているが、顔は真っ赤に染まり、半分口が笑っている。そんな三成に娘は笑みを向けた。
「本当は、お優しい方なんですね。……私も三成様のこと……あ、いえ! その……無礼の数々、お許しください!!!!」
再び、ベタッと額を床につける娘。
三成はゆっくりと片膝を畳につけ、そっと娘の肩に手を置いた。