第5章 第2ボタンをあなたへ/黒子テツヤ・青峰大輝
ようやく、彼の足が止まった。離れる手と手。
そこは今さっきまで式典を行っていた体育館の裏。
「……宛もなく歩いていたのですが、無意識の内、ここに来てしまいました」
「……宛もなかったんだ……。毎日毎日、足を運んだ場所だもんね」
二人並んで体育館を見上げる。今にもボールをつく音が聞こえてきそうな……
ダンダンダン……ダンダンダン……
「え?」
思わず同じ表情で顔を見合わせる。
卒業式の後は来月の入学式に備え、体育館をそのままにしておくのが例年の決まりで、一時的に体育館は閉鎖される。
その為、ボールをつく音が聞こえるはずはない。
中を覗こうとした時、館内から目の前に青い髪をした長身が現れた。
「青峰くん……」
「よぅ、テツ。わざわざ悪いな」
話の見えないは、彼らの顔を交互に見つめ、話の行方を追った。
「ここで待ってれば、お前が連れて来ると思ってた」
「……渡しません」
「お前も言うようになったじゃねーか」
上から見下ろす青峰に、下から見上げる黒子。
ただならぬ雰囲気には止めに入ることすら出来ない。
「あ~!! もう、またやってる!!」
聞き覚えのある声に顔を向ければ、ピンクの長い髪をした女子生徒が駆け寄ってきた。
「あ……桃井さん」
「ゲッ……さつき……」
「大ちゃん!! またテツくんの事、いじめてたでしょ!」
彼女の登場により、いくらか緊張感は薄れた。が、は浮かない表情。
……桃井が黒子に思いを寄せている事を知っているからだ。