第3章 僕から君へ/ヒソカ
一時的に念が使えなくなったのだ。
「あの時は、本当焦ったんだから!!」
けれども、この道化師は悪びれた様子もなく、慌てる私に「へ~、面白いキャンディだね♪」と笑うばかり。
挙げ句の果てに、"美味しい"と人にすすめておきながら、本人は一度も食べたことがなかった……。
それから、彼が「あげる」というモノを警戒するようにしている。
だから、今。
彼が手にしている小さな箱に入った甘いモノを、私は拒んでいる訳だ。
「……じゃあ、僕も食べようか?」
「どうせ、お得意の念で誤魔化すんでしょ?」
「…………」
ガサガサ……ガサガサ……
ヒソカの伸びた爪が乱暴に淡いピンク色のラッピングを剥がしていく。
箱の蓋を開け、中から現れたのは幾つものハート型をした一口サイズのチョコレート。ピンクと茶色が交互に列を成している。
街灯の光を受け、表面に光沢が宿る。……美味しそう……。
「どれでも好きなのを君が取って、僕に食べさせて♪」