第3章 マテールの亡霊
(『!? …えっ…?』)
急に抱き付かれ困惑し、何とか彼の腕の中から抜け出そうとするユウリ。しかし、歳はそう変わらなくても彼はやはり男で、そう簡単に抜け出せない。
(『…な、なんなの…?』)
しかし、彼は無防備でユウリは攻撃を躊躇う。
?「…ユウリってさ、……やっぱ結構胸ある…よな?」
『!? …え、あ? え?え、え?///』
青年の突然の問い掛けに、最初は意味が理解出来なかったが、意味を理解すると、顔を真っ赤にして戸惑い始めた。
?「…あ、そろそろ仲間んとこ戻った方がいんじゃないのか?」
『Σ!! あっ…! や、やだ…ユウっ…!!』
他にも一緒に来てるやついるんだろ?と言う青年の言葉を最後まで聞かずに、ユウリは腕から抜け出そうと、再び暴れ出す。
?「ちょ、そんな暴れんなって。…てか、ユウ…?…まぁ、いっかぁ… そこの左の通路行けばこっから出れるぜ。」
青年は、ユウリが焦り神田の名前を呼ぶと、頭にハテナを浮かべた様だが、直ぐにそれよりも…と話し始めた。
?「…あぁ。階段があったら下に行けよ。それと、分かれ道は右、左交互にな〜」
それだけ言うと、彼はもと来た真ん中の通路に向かい歩き出した。
?「…あ。」
『??』
と、藪から棒に声を発したかと思えば、急にこちらを振り返った。
?「…俺の名前、ドレッドな。」
んじゃあなぁ~、とひらひら手を振る後ろ姿を黙って目で追った。向かって来ないならば、深追いする必要はない。それより今は、アクマと交戦したアレンや、人形と共に先に行った神田と合流することの方が先決だ。
通路の闇に消えていった彼のことは気になるが、エクソシストというのが本当なら、本部に帰ってコムイに聞けば多少のことは分かるだろう。
(『ふぅ…行ってみるしかないか』)
彼が行けと言った左の通路に目を向けた。彼を信用したわけではないが、巨大な地下通路を抜け出す順路など知らないため、左の通路を進んでいった。