第3章 マテールの亡霊
『!?』
突然の、見知らぬ青年からの名指しにユウリは驚きつつ動いた。イノセンスで瞬時に相手の後に回りこみ、相手の首筋にナイフの腹を充てた。しかし、青年は、微動だにしなかった。
『…どこで…その名を?』
?「…マジ? ほんとに本物の神田 ユウリなの…!?」
『…っ!?』
相手が急に振り返えってきた為、慌てて喉元にあてたナイフを持つ腕を緩めた。未だ油断はできないが、彼は多分人間で無節操に傷付ける訳にはいかない。
?「…へぇ…そっ、か!アンタが…噂通りなんだなぁ…。オレ、ずっとアンタに会いたかったんだ。」
無言を肯定ととったのか、彼は納得した声を漏らすと、緩んだ腕からするりと抜け出し、ユウリをマジマジ見た後、ギュッ抱きしめた。