第3章 マテールの亡霊
?「ん〜? あんれぇ~アクマかと思ったんだけどなぁ〜」
緊迫した空気は、相手の第一声でぶち壊れた。光の多い場所まで出てきてくれたおかげで、僅かだが相手の姿をとらえることができている。そして、こちらが暗がりにいるといえど、相手にもエリナの姿が確認できるようだ。
(『?…あ、ひと…?』)
そして姿を現したのは、どうやら人間で、それも声からして男の様だ。フード付きのコートをすっぽりかぶっている。
しかし、此処にはユウリ達エクソシスト以外、人等いない筈で、人に化けたアクマかとも思ったが、彼からアクマの気配はしない。
?「なんかスゲー音したからきてみたけど… こりゃまた派手にやったなぁ」
手を額にかざし、天井の大穴をのんきに見上げながら近づいてくる。
『っ…動かないでっ…!!』
幾らアクマの気配がないとはいえ安全とは言い切れない。ユウリが鋭い声を上げると、ちょうど天井から差し込む光の柱の中に、相手はおとなしく立ち止まった。
?「…まぁまぁ。そう警戒すんなって。俺、アクマじゃ無くてエクソシストだし。」
ほら、と言いフードを脱いだ下の顔が、光に照らされ露わになった。薄茶色のボブカットに、明るいブルーの瞳で歳は、神田とそう変わらず、大人ではないが少年という歳でもないだろう青年だった。両手を軽く挙げ、敵意はないと示すその青年に、ユウリはゆっくり歩み寄った。
『…貴方も… エクソシスト、なの…?』
光の柱の中に自分も入り、お互いの顔が確認できる状態になった。ほら、とコートをまくって見せられたのは、エクソシストの証であるローズクロス。少々汚れや痛みが見えるものの、十字架や、そこに刻まれた文字など、間違いない。
?『? あれっ …もしかしてアンタ…神田 ユウリか…?」
ユウリが気を取られていると、青年が不意にそう尋ねてきた。