第3章 マテールの亡霊
―すっかり日が暮れ、そろそろ目的地のマテールに着く頃。
神田「おい、モヤシ…降りたら急ぐぞ。」
廊下にいるトマの無線機で現地と連絡をとっていた神田が戻ってきて言った。
アレン「え?」
神田「…行くぞ。」
神田にそれ以上説明する気はなく、同時に汽車が速度を緩め始め、出て行く神田に続きユウリが席を立ったので、アレンもそれに続く。
『アレーン? 先に行くよー?』
急いで支度をするが、彼女のもとへ向かうと彼女と神田は、転落防止用の低い手すりを乗り越え、未だ走り続ける汽車から飛び降りていた為、アレンは急いで二人の後を追った。
『…アレン、大丈夫?』
アレン「は、はい… 大丈夫です。」
アレンが追いつくと、ユウリは振り返りアレンを気に掛けてくれた。かなりのスピードでマテールへ急ぐ神田に、ユウリは涼しい顔でついて行く。
―――ゾクッ
アレン「…!!」
ふと、足を止めると、目下に廃れた石造りの街が広がり、そこはピリピリとした空気が漂うだけで、ファインダーもアクマも見当たらない。
神田「…チッ… トマの無線が通じなかったんで急いで見たが…」
『…少し… 遅かったみたいね…』
舌打ちする神田の言葉をユウリが続けた。
神田「おい、モヤシ…。始まる前に言っとく。お前が敵に殺されそうになっても任務遂行の邪魔だと判断したら、俺はお前を見殺しにするぜ。」
『…ユウ…』
顔を歪めるアレンに、神田が言いユウリが咎めるが、神田は尚も続けた。
神田「…戦争に犠牲は当然だ。変な仲間意識もつなよ。」
アレン「…ユウリは、いいんですね…」
神田「ハッ …こいつは足引っ張る事は絶対しねぇ。」
そんな2人にユウリは困った顔をし、アレンは嫌な言い方、と呟いた。