第3章 俺だ。私だ。うるさいな、僕だろ。
「レディース&ジェントルマン!さぁて、本日は熱い戦い!アメストリスナンバーワン錬金術師を決める闘いだぁ!!」
甘いマスクの下には燃えたぎる闘志を秘めている、焔の錬金術師ロイ・マスタング!
「ふ。私が負けるはずがない。」
小さい身体に機械鎧の腕、その力は未知数、鋼の錬金術師エドワード・エルリック!
「ちっさいいうな!」
俺に似てイケメン!天才的な錬金術の腕!最っ高にパーフェクトな自慢の息子!ビーネ・ヒューズ!
「…僕も参加なの?」
さぁ!彼らの錬金術がぶつかり合う熱い戦い!
構えて構えてぇえ!!レディー…ファイッ!
「ま、まって。父さん……僕は…」
「余裕だなハニー!その顔、煤まみれにして見せよう!」
ヒャッハー!とハイテンションなマースにはビーネの声は届かない。(無視かもしれない)
ぐぐ、と指に力を込めるロイの視線は一直線にビーネに向かっている。
「大佐!ビーネに手を出すんじゃねぇ!」
「騎士にでもなったつもりか!鋼の!」
(うわぁ。こいつら完全に頭に血が上ってるよ。)
いつの間にかビーネのことなんてそっちのけで始まった、エドとロイのドンパチ。
ロイの焔の爆風にエドワードが飛んでいくのが、体育座りをしていたビーネの視界に入った。
「はーっはっは!見たか鋼の!次はビーネお前だ!私の焔の餌食になるのだ!」
なんだろう。ロイの頭に角が見える。
「くそ!ビーネ!俺の仇を取ってくれ!」
君も君で何を言っているんだね。
ロイは容赦なくビーネに向かってバシバシ焔を撃ってくる。
「ねー!ロイ、やめようよー!」
「ふはははは!」
「もう!とうさーん!」
「なんだハニー!諦めるのか!俺はお前をそんな不抜けた息子に育てたつもりはないぞ!やれ!ハニー!お前の力を見せつけるのだ!」
マースの素晴らしい演説に、観客達が囃し立てる。
ビーネ、君はもうこの場から逃げ出すには戦うしかないんだ。
戦え!戦うんだ!