第2章 境界
一瞬、何が何だか分からないという顔をする信乃。
そんな信乃の気持ちを知ってか知らずか、荘介は少し呆れ気味に溜め息を付き、信乃の胸、それも心臓部に手を触れようとした。
『…えっ そ、すけ… !?…ッぅッ… い"あぁっ …そーすけ、触んないでぇっ…』
荘介「!!」
神父「!! …それはっ!」
すると、荘介の手は、【バチバチバチッ】という凄まじい音と共に電流の様な力に弾かれ、信乃の胸に触れる事は出来なかった。
そして信乃の心臓部辺りには、何かの爪痕が痛々しく残っていた。
神父は、それを見た途端、信乃に駆け寄り慌てふためいた。
神父「信乃! これっ…ど、どうしたんですか…!!」
『せん、せ…? これが何だか知ってるの…?』
神父は青ざめた表情のまま語り出した。
神父「尾崎の五狐の力ですよ! …昔、尾崎の五狐が使っていたとされる主を護るための法印…【五狐の法印】でしょう… それを何故貴女が…? まさかっ…今朝の!?…」
荘介「…五狐の法印…?」
神父「…え、えぇ。あれは、異界の者が主に近づかない様にするためのもの… 信乃、貴女が帝都に向かえば貴女の身体は確実にその法印に蝕まれていくでしょう…」
荘介「!? そんなっ… 信乃…!!」
『…荘介… 明日の朝、此処を出よう。…早く浜路を探しに行こう。』
荘介・神父「「!? 信乃…」」
荘介「…信乃、貴女その身体では… 『絶対私も行くからね。』…信乃!!」
暫く見つめ合う二人。先に折れたのは荘介だった。
荘介「…はぁ… 分かりましたよ。 でも、無理は駄目ですからね。」
『!! うん、浜路を探しに行こう。』
そして夜が明け始めた頃、信乃と荘介は、浜路を探すため帝都へと旅立ったのだった。